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魚話その206 マダイ天獄~頭部グラビア編~

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  ●マダイ頭部パーツの写真集を作ってみた   今から1年ちょい前の話. いきもにあ(2015年12月開催)にて,何を血迷ったか“マダイの頭部パーツ検索チャート”なるものを作成,会場と ウェブで配布 した.   図1.マダイの頭部パーツ検索チャート あのチャートは生真面目に全てのフローを追ってパーツを1個1個同定するものではなく,「見りゃわかるわい」といったパーツを全て除いた後の,決め手に欠けるパーツに使用するものだ. 人によって迷うパーツは異なるだろうと考えた結果,全てをチャートに入れることにしたのだ. さて. 苦労した割には紙ペラ一枚で終了してしまったチャートであるが,いくつか追加したいことがあった. その一つが,複数方向から観察した写真である. 卓上にばら撒いた時に安定して向きをチャートに描いたものの,使用者にパーツをぐるぐると回してもらい図と比較してもらうのがチャートの主な使用法である. ただ,画力のなさに加え,もうちょいユーザーフレンドリーにしたいと常々考えており,打開策として複数方向からの写真を追加する計画は以前からあった. しかし,マダイの頭部パーツは左右の重複を削っても50弱あり,どうせなら4方向は撮りたい. そうすると単純計算で200枚.   図2.撮影方向別に分けた頭部パーツ(後述の深度合成済ファイル)   しかも起伏の激しい小さなパーツを手前から奥までピントが合った写真を撮影するのは困難であるため,マクロレンズを使ってピントを手前から奥までずらしつつ30枚前後撮影して深度合成する…といった工程をパーツの数だけ行うということを意味する. 深度合成に関してここで説明するスペースはないので,ちょいと古いけれど, こちらの記事 を参考にして戴きたい. 図3.深度合成の概念図 a)手前から奥まで0コンマ数ミリ刻みでカメラをずらして撮影,b)ZereneStackerという深度合成ソフトで1枚にまとめる で,ここで何枚撮影したら良いのかを試算すると,ええと…50(パーツ)×4(方向)×30(枚)=6000… 大体ここら辺まで試算して心が折れること数回,構想から1年半の歳月を経て,展示物が用意できない時にお茶を濁すための配布資料としても使い回しできそうだという希望を支えに,睡眠時間を削ってちまちま作業. ついで...

魚話その165 もう魚しか見えない その04

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●和本と魚尾 ※SeeSaaブログ2010年06月24日掲載記事を移植しました 最初は本の引っ越しの話. 最大の懸念事項であった書物の引越しは自力で運ぼうとものの,試しに詰め込んでみて唖然.     図1.a)引っ越し前の本棚周辺,b)新居の書籍スペース   世間の読書家からすれば微々たるものであるし,『魚本の近くにいるものこそ自分』とまでは思わないが,執筆に便利なので,散逸は避けたい. ただ以前はルアー製作部屋を兼ねていたため大量の埃にまみれており,職場移転の隙に無休で整理していたら,軽い喘息が発生. というわけで,書籍代を削り,本の引越しだけ業者依頼することにしたのであった… さて. つまみ食い同様,片付け中に読む本は大変面白い. 今回も,小説の地層から,なぜか‘倭漢三歳圖会’の原書を発見. 後は言わずもがな…     図2.倭漢三歳圖会a)外装,b)内側 何度となくこのブログでも登場する書籍のオリジナルで,2010年初頭に入手した. 良品・全巻揃えで100万円以上するのだが,不揃いの書籍は様々な情報を欠くため,格安で入手することができるのだ. ちなみに僕は魚の部分だけを数千円で入手した. これは他の和本に関しても言えるので,もし興味はある人は探してみると良い. ただし,似たようなことを考える人は多いこともお忘れなきよう. ところで,倭漢三歳圖会をはじめとする江戸時代の本の折り返しには墨付きカッコ(【)のような模様が入っている. 和本は週刊誌の袋綴じのような構造をしており,半分に折った紙を重ねているのだ. そして上記の模様は折る際のセンター決めに付けられるそうだが,魚の尾鰭を想起させることから‘魚尾(ぎょび)’と呼ばれている.     図3.和本の魚尾(矢印).a) 倭漢三歳圖会,b)倭漢三歳圖会(折り目を開いた状態),c)博物教授書,d)陸氏草木流図解   細かい話は割愛するが,魚尾の元となった魚の尾…もとい魚の尾鰭は骨格の形状に基づき,いくつかのパターンに分類される(図4).   図4.a)尾鰭の形態的分類(左列)と例(右列).白っぽい部分は骨格の略図.(クリックして拡大) このうちの正尾が魚尾のイメージになっているのだろう. タイやカツオ,ボラ,コイといった当時の‘メ...