魚話その209 シン・リアルタイム骨取りその3 ~頭部の除肉やるよ~
今回は頭部のJO☆NI☆KU開始.
見やすい角度や説明のしやすさの都合で,いくつかの魚種が混在しているが勘弁してほしい.
どうしても撮りやすい形状などに差異があるのだ…
【注意!!!!!】
今回は除肉の回なので,解体中の写真が多数出てきます.
食用に魚を捌く写真とほぼ一緒なのですが,血や内臓が苦手な方がいらっしゃるかもしれません.
それでもご覧になりたい方のみ以下の本文をご覧ください.
【注意!!!!!】
1. 肩帯と腰帯の分離と除肉
肩帯と,(魚種によるが)腰帯を外す.肩帯はいくつかのパーツで後頭部と連結しているわけだが,板状のパーツが重なっているだけであるため、時間が経つと重なり具合が分からなくなる.
適当に組み立てるのも一つのやり方かもしれないが個人的にはモヤモヤするので,左右で異なる連結部位で分断しておき,情報を残すようにしている.
Fig. 1 a) 頭部と肩帯の分離している場所,b) 分離された肩帯および腰帯,c) 除肉後の肩帯および腰帯(黒矢印が後側頭骨,赤矢印が擬鎖骨) 普段は後側頭骨-上擬鎖骨間(上の黒三角)か上擬鎖骨-後擬鎖骨間(下の黒三角)で分離している. 今回は偶然既にグラついている部分があったので,左肩帯は上擬鎖骨‐擬鎖骨間で,右肩帯は神経頭蓋‐後側頭骨間で外した. |
2. ヒレの除肉
新鮮で冷凍焼けしていない魚限定だが,鰭条の付け根に切れ込みを入れピンセットで慎重に引っ張ると,手袋を脱ぐように皮を剥くことができる(Fig. 2).
ついでに鰭条の間の膜もクリーニング.
Fig. 2 ヒレの除肉(イヌゴチ) 魚種により難易度は大きく異なるが、皮が厚い魚種は新鮮なうちに剥皮を済ませた方が後で楽. |
小型魚の場合は肩帯や腰帯をが小さすぎて除肉時に持ちづらいこともあるので,頭部からの分離と順番を入れ替え,持ち手代わりにすることもある.
大まかな流れは大体一緒だが,細部はその時の気分や魚種でアレンジしている.
3. 頭骨の除肉
頭骨の除肉はとにかくパーツの紛失に注意しながら作業を進めている.
Fig. 3は過去に公開したデータの一部だが,参考に今回の記事でも頭部パーツの大体の位置と名称を載せておく.
これを踏まえ…魚種にもよるが,眼下骨,鼻骨,上側頭骨は頭部の剥皮時に紛失しやすいので注意が必要.
プラプラしているパーツは後の作業で紛失する可能性があるので,位置関係と連結状況を撮影してから別容器に回収・保管し組立時に合体させる(Fig. 4).
Fig. 4 外れてしまった小パーツ保管の一例 静電気で気づかぬうちに紛失する可能性もあるので,マスキングテープでケースに貼り付けメモを残すようにしている. |
4. 細部の除肉
細くて破損しやすい鰓条骨や鰓弓もピンセット2本使いで除肉している.
新鮮なうちにパーツを見極めてしっかり押さえれば,案外きれいに毟り取ることができる(Fig. 5, 6).
Fig. 5 鰓弁の除肉の様子(イヌゴチ) a) 鰓弁を毟り取っている様子,b) 除去後 |
Fig. 6 舌周辺の除肉の様子 a) 除肉前,b) 除肉後 |
下顎の内側(具体的には歯骨の内側)(Fig. 7)と上顎の内側(口蓋および翼状骨群)に張り付いている厚い皮も丁寧に剝がす(Fig. 8).
Fig. 7 歯骨内側(黒矢印)の除肉の様子 a) 除肉前,b) 除肉後 |
Fig. 8口蓋の剥皮 a) 副蝶形骨を傷つけないように切れ込み(黒矢印)を入れている様子,b) 剥皮中の様子 |
いわゆるホホ肉を取り除くと翼状骨群が見えるが,薄くて透明感があるパーツのため内側に張り付いている皮が丸見えになり,変色が目立つ.
ついでに前上顎骨~翼状骨群の間に張っている膜(よく釣り針がかかるところ)も丁寧に除去(Fig. 9).
ちょっと面倒だが,顔周りの仕上がりに差が出るのできっちり除去しておきたい.
Fig. 9 口周りの膜の除去 |
5. 脳の除去
眼窩から「薄膜」経由で神経頭蓋の内部にアクセスできるので,キムワイプで作ったコヨリや歯間ブラシを突っ込んで脳を除去する(Fig. 10).
脳は脂を大量に含むため,頭骨内に残っていると頭頂部の褐変の原因となる.
もろに目立つ場所なので,脱脂の第一段階と言っても良いんじゃないかというくらい重要な工程と考えている.
Fig. 10 脳の除去 a) 眼窩から見た「薄膜」(黒矢印),b) 歯間ブラシによる脳の除去,c) 歯間ブラシに付着した脳,d) コヨリで吸着した脳 |
Fig. 11 a) 頭骨の除肉前,b) 除肉後 |
8~9割くらい除肉したら軽く水に漬けて細かい肉屑を落とし,前回除肉した胴体とともにぬるま湯+中性洗剤の溶液に1時間ほど浸す(Fig. 11a).
その後「バケツに張った冷水に5分ほど浸す→水を交換」という作業を20回くらい繰り返す.
パーツ間の連結が緩くなるため就寝中(こまめに確認できない)に洗剤処理を充てないようにし,すすぎも排水時には目の細かいザルを併用して紛失を防ぐ・強い流水を当てない等丁寧に取り扱う.
Fig. 12 a) 中性洗剤処理,b) 乾燥の様子 |
ヒレが付いているパーツは全部吊り下げ,頭骨はバットに乗せて微風を当てつつ乾燥(Fig. 12bおよび前回のFig. 13b).
頭部のクリーニングは楽しい作業だが,脂が酸化してどんどん黄変するので,1日で完了させるか再度水ごと凍結して保管する.
変色後も脱脂と漂白である程度リカバーできるが,変色前に脂を抜いておいたほうが綺麗に仕上がる.
趣味ホネ人は結構多いが,魚以外を扱う人が多い印象だ.
身近なところで理由を問うと,パーツが多くて面倒とか,華奢だからとかが主な理由のようだ.
Fig. 3は「マダイの頭部パーツのしおり的な何か」というフリーの写真集の一部で,パーツを数えてみたら,頭骨,胸ビレ・腹ビレ周囲のパーツを合わせて100近くあった.
今回のシリーズも全部バラバラにする作戦を考えたが,そんなにサイズが大きくないし,ブログ執筆と並行するにはちょっときついので,できるだけ繋がった状態で作業を進めた.
軟組織が若干残ってしまうことと,入り組んだ場所の作業がしづらいのがネックだが,ふやかすことでポージングしやすいという利点は捨てがたい.
というわけで本日はここまで.
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